小規模宅地等の特例「家なき子特例」とは?適用要件や老人ホーム・孫への遺贈を解説
2026.05.01 相続税
相続した自宅の土地については、一定の要件を満たすことで「小規模宅地等の特例」を適用できる場合があります。
特定居住用宅地等に該当すれば、330㎡までの部分について土地の相続税評価額を80%減額できるため、相続税の負担を大きく軽減できる可能性があります。
被相続人と同居していなかった親族であっても、一定の要件を満たせばこの特例を適用できる場合があります。一般に「家なき子特例」と呼ばれている制度です。
「家なき子」という名称ですが、適用対象は子に限られておらず、一定の要件を満たす被相続人の親族が対象となります。
家なき子特例を受けるための主な要件
家なき子特例を利用するためには、被相続人と宅地を取得する親族の双方について、一定の要件を満たす必要があります。
被相続人についての要件
主な要件は次のとおりです。
- 被相続人に配偶者がいないこと
- 相続開始の直前において被相続人と同居していた法定相続人がいないこと
つまり、配偶者や同居親族がその自宅の土地について特例を受けるケースとは異なり、別居していた親族が取得する場合の要件が定められています。
自宅の土地を取得する親族についての要件
取得する親族についても、次のような要件があります。
- 被相続人の居住用宅地を相続又は遺贈により取得すること
- 居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない 者ではないこと
- 相続開始前 3 年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族または取得者と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く)に居住したことがないこと
- 相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれの時において も所有していたことがないこと
- 相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有していること
特に注意したいのが、単純に「現在、持ち家がなければ適用できる」という制度ではないことです。
相続開始前3年間の居住状況だけでなく、現在住んでいる家屋を過去に所有していなかったかなどについても確認する必要があります。国税庁も、家なき子に該当する場合の添付書類として、これらを証明する書類を求めています。
被相続人が老人ホームに入居していた場合は?
被相続人が老人ホームなどに入居していたため、亡くなった時点では自宅に住んでいなかったケースも少なくありません。
この場合でも、一定の要件を満たせば、老人ホームなどへ入居する直前まで住んでいた自宅の敷地を特定居住用宅地等として扱える場合があります。
例えば、被相続人が要介護認定・要支援認定などを受けて一定の老人ホーム等に入居していたことや、自宅を新たに被相続人等以外の人の居住用や事業用として使用していないことなどが要件となります。
そのうえで、宅地を取得する親族について家なき子特例の要件を満たしていれば、小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります。
家なき子特例は孫への遺贈にも使える?
家なき子特例の対象は「子」に限定されているわけではありません。
そのため、例えば子がすでに持ち家を所有している場合でも、持ち家のない孫へ自宅の土地を遺贈し、その孫が家なき子特例の要件を満たしていれば、小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります。
ただし、孫が代襲相続人などに該当しない通常のケースで遺贈によって財産を取得すると、相続税額の2割加算の対象となることがあります。
そのため、「小規模宅地等の特例が使えるから孫へ遺贈した方が有利」と単純に判断するのではなく、特例による相続税の軽減額、2割加算、他の相続人への影響などを含めて検討することが重要です。
孫世帯の今後の生活設計や自宅を誰に引き継いでもらいたいかといったご家族の希望も踏まえ、総合的に判断する必要があります。
家なき子特例は要件の確認が重要です
家なき子特例を適用できれば、自宅の土地について330㎡まで相続税評価額を80%減額できるため、大きな節税効果につながる可能性があります。
一方で、現在持ち家があるかどうかだけで判断できる制度ではなく、過去の居住状況や住宅の所有状況、被相続人の配偶者・同居親族の有無、相続後の土地の保有状況など、複数の要件を確認する必要があります。
また、小規模宅地等の特例を受けるには、相続税申告書への記載に加えて、計算明細書など一定の書類を添付する必要があります。
相続した自宅について「家なき子特例を使えるのではないか」と思われる場合は、相続税申告を行う前に適用要件を確認することをおすすめします。