名義預金とは?相続税の対象になるケースと判断のポイントを解説
2026.07.01 相続税
相続税の申告で見落としやすい財産の一つが、「名義預金」です。
「子ども名義だから子どもの財産」「妻名義だから妻の財産」と考えてしまいがちですが、預金口座の名義だけで、その預金が誰の財産なのかが決まるわけではありません。
例えば、父親が自分のお金を子ども名義の口座に預け、通帳や印鑑なども父親自身が管理していた場合、子ども名義であっても、実質的には父親の財産と判断され、父親が亡くなった際に相続税の課税対象となる可能性があります。
相続税申告では、被相続人本人の預金だけでなく、配偶者や子、孫など家族名義の預金についても確認することが大切です。
名義預金とは?
「名義預金」とは一般に、預金口座の名義人と、その預金を実質的に所有している人が異なる預金をいいます。
例えば、父親が子どもの将来のために子ども名義の預金口座をつくり、父親自身のお金を継続的に預けていたケースを考えてみましょう。
子ども名義の通帳だからといって、当然に子どもの財産になるわけではありません。
父親が資金を出し、通帳などを保管して預金を管理しており、子ども自身がその預金の存在を知らなかったような場合には、実質的には父親の財産と判断される可能性があります。
その父親が亡くなれば、子ども名義の預金であっても、相続財産として相続税申告に含める必要が生じることがあります。
国税庁が公表している「誤りやすい事例」でも、被相続人以外の名義であっても、被相続人が取得資金を拠出しているなど、被相続人の財産と認められる預貯金については、相続税の課税対象になることが示されています。
名義預金かどうかはどうやって判断する?
名義預金に該当するかどうかは、預金口座の名義だけではなく、その預金が実質的に誰の財産だったのかを確認して判断します。
主に次のような点を総合的に確認します。
- 預金の原資を誰が負担したのか
- 誰が口座を開設し、預入れをしていたのか
- 資金を出した人に贈与する意思があったのか
- 名義人が贈与を受けたことを認識していたのか
- 通帳・印鑑・キャッシュカードなどを誰が管理していたのか
- 預金の入出金を実際に誰が行っていたのか
例えば、被相続人が預金の原資を負担し、子や孫名義の口座をつくり、その後も被相続人自身が通帳等を保管して自由に預金を出し入れしていた場合には、実質的には被相続人の財産だったと判断される可能性が高くなります。
反対に、生前に贈与が成立しており、贈与を受けた人がその預金を自ら管理・使用しているなどの事情があれば、名義預金ではなく、贈与を受けた人の財産と判断される可能性があります。
つまり、重要なのは、「誰の名義になっているか」だけではなく、「実際には誰の財産だったのか」という点です。
「贈与したつもり」でも名義預金になる?
名義預金を考えるうえで、特に注意したいのが生前贈与との違いです。
例えば、父親が「毎年100万円ずつ子ども名義の口座に入れていたから、すでに子どもへ贈与した財産だ」と考えていたとしても、それだけで必ず贈与が成立しているとは限りません。
贈与は、財産を渡す側だけでなく、受け取る側にも贈与を受ける意思があったのかなど、実際の状況を確認する必要があります。
そのため、
「子どものために貯めていた」
「孫の名前で口座をつくっていた」
というだけで、相続財産から除外してしまうのは注意が必要です。
相続税申告の際には、生前贈与として成立していたのか、それとも被相続人の名義預金として相続財産に含めるべきなのかを確認することが重要です。
配偶者名義の預金も名義預金になる?
名義預金は、子どもや孫名義の預金だけの問題ではありません。夫婦間の預金についても注意が必要です。
例えば、夫が働いて得た収入を原資として妻名義の預金口座に資金を移していた場合、「妻名義だからすべて妻の財産」とは限りません。
夫が資金を負担し、実際の預金管理も夫が行っていたなどの事情があれば、実質的には夫の財産と判断される可能性があります。
一方、妻自身の給与や事業収入などを原資として形成された預金であれば、妻自身の財産であることを検討します。
したがって、配偶者名義の預金についても、名義だけを見るのではなく、「そのお金はどこから来たのか」「誰が管理していたのか」を確認することが大切です。
生活費として妻や子に渡したお金は贈与税がかかる?
夫婦や親子など、扶養義務者から受け取った通常必要と認められる生活費や教育費については、原則として贈与税はかかりません。
ただし、非課税となるのは、生活費や教育費として必要な都度受け取り、直接その費用に充てるものです。
例えば、生活費として受け取ったお金を使わずに預金したり、そのお金で株式や不動産などを購入したりした場合には、「生活費として渡したお金だから」という理由だけで当然に贈与税が非課税になるわけではありません。
夫婦間や親子間の資金移動についても、何のために渡したお金なのか、その後どのように使われたのかを確認する必要があります。
子や孫に財産を残したいという思いも大切に
被相続人が生前に子や孫の名義で預金口座をつくっていた場合、そこには、「将来、この財産を子や孫に残したい」という思いがあったのかもしれません。
ただし、子や孫の名義になっているからといって、その預金が当然に子や孫の財産になるわけではありません。
資金の出どころや預金の管理状況、生前贈与が成立していたかなどを確認し、名義預金として相続財産に含めるべきかを適切に判断する必要があります。
そのうえで、名義預金として相続財産に含まれる場合でも、遺産分割を考える際には、なぜ被相続人がその名義で預金をしていたのか、生前どのような考えを持っていたのかも、ご家族で話し合う一つの材料になるでしょう。
相続税の計算だけで終わらせるのではなく、亡くなった方の思いも大切にしながら、ご家族が納得できる財産の分け方を考えていくことも相続では大切です。
相続税申告では家族名義の預金も確認しましょう
相続税の申告では、亡くなった方本人の預金だけを確認すればよいわけではありません。
配偶者や子、孫などの名義になっている預金の中に、実質的には被相続人の財産と考えられるものがないかを確認することも重要です。
特に、
- 被相続人から家族名義の口座へ多額の資金移動がある
- 配偶者名義に、その収入状況からみて多額の預金がある
- 子や孫名義の預金を被相続人が管理していた
- 毎年一定額を家族名義の口座へ入金していた
- 名義人本人が預金口座の存在を知らなかった
といった場合には、その預金が誰に帰属する財産なのかを確認しておく必要があります。
相続税申告では、預金の名義だけで判断せず、資金の出どころ、生前贈与の有無、通帳等の管理状況、入出金の状況などを確認して、実質的に誰の財産だったのかを判断することが大切です。
まとめ|名義預金は相続税申告で見落としやすい財産です
名義預金で最も重要なのは、「口座の名義」と「財産の実質的な所有者」は必ずしも同じではないということです。
子や孫、配偶者名義の預金であっても、実質的に被相続人の財産と判断されれば、相続税の課税対象となる可能性があります。
一方で、本当に生前贈与が成立している預金まで、すべて名義預金になるわけでもありません。
そのため、相続税申告では、
「誰がお金を出したのか」
「贈与は成立していたのか」
「誰が預金を管理していたのか」
などを一つひとつ確認することが重要です。
特に、長年にわたって家族間で資金を移動している場合には、過去の経緯が分からなくなっていることもあります。
「家族名義だから相続財産ではない」と判断する前に、預金の原資や管理状況を丁寧に確認することが、適正な相続税申告につながります。